高血圧
高血圧は、日本人の3人に1人が罹患していると言われる身近な病気です。
しかし、自覚症状がほとんどないため、気づかないうちに病状が進行し、心臓病や脳卒中、慢性腎臓病、大動脈瘤といった命に関わる重大な病気を引き起こす可能性があります。
しかし、自覚症状がほとんどないため、気づかないうちに病状が進行し、心臓病や脳卒中、慢性腎臓病、大動脈瘤といった命に関わる重大な病気を引き起こす可能性があります。
ページ内目次
チェックリスト
高血圧チェックリスト・こんな方は高血圧かもしれません
- 塩分の多い食事が好きで、外食が多い
- 野菜や果物をあまり食べない
- 肥満気味である
- 運動不足である
- ストレスが多いと感じる
- 喫煙の習慣がある
- 飲酒量が多い
- 家族に高血圧の人がいる
- 睡眠時間が不規則、または短い
- 家族にいびきがうるさいと言われる
- 健診で血圧が高いと指摘されたことがある
健診で血圧が高いと指摘された場合は、放置せずに医療機関を受診しましょう。
早期発見・早期治療が重要です。
高血圧とは
高血圧とは、血管にかかる圧力(血圧)が慢性的に高い状態が続く病気です。血圧は、心臓が血液を全身に送り出す際の圧力である「収縮期血圧(最高血圧)」と、心臓が広がり、血液が心臓に戻ってくる際の圧力である「拡張期血圧(最低血圧)」の2つの数値で表されます。
高血圧の診断基準は、日本高血圧学会のガイドラインによって定められています。病院やクリニックで測定した場合と、自宅で測定した場合では基準値が異なりますので注意が必要です。
高血圧の診断基準は、日本高血圧学会のガイドラインによって定められています。病院やクリニックで測定した場合と、自宅で測定した場合では基準値が異なりますので注意が必要です。
病院・クリニックでの高血圧の基準
病院やクリニックで測定する血圧は、緊張などにより普段よりも高めに出る傾向があります。そのため、自宅で測定する血圧よりもやや高い基準値が設定されています。一般的に、収縮期血圧が140mmHg以上、または拡張期血圧が90mmHg以上の場合に高血圧と診断されます。これは、医師や看護師の前で測定される「診察室血圧」と呼ばれるもので、一度の測定で高血圧と判断されるのではなく、複数回の測定で継続的に高い場合に診断が確定します。また、診察室では白衣高血圧(医療従事者を見ると血圧が上がる現象)と呼ばれる状態も考慮されます。
家庭での高血圧の基準
家庭で測定する血圧は、リラックスした状態で測れるため、普段の血圧に近い数値が得られます。そのため、病院で測定するよりも低い基準値が設定されており、収縮期血圧が135mmHg以上、または拡張期血圧が85mmHg以上の場合に高血圧と診断されます。家庭血圧は、毎日の血圧の変動を把握する上で非常に重要であり、日々の血圧測定を習慣化することが推奨されています。朝と晩にそれぞれ2回ずつ測定し、その記録を医師に伝えることで、より適切な診断と治療に繋がります。
高血圧の原因は
高血圧の主な原因は、遺伝的な要因と生活習慣が複雑に絡み合って起こると考えられています。特に、食塩の過剰摂取、肥満、運動不足、喫煙、過度の飲酒、ストレスなどが挙げられます。これらの要因が血管に継続的な負担をかけ、高血圧を引き起こします。
高血圧の原因は大きく分けて、特定の病気が原因で起こる二次性高血圧と、原因が特定できない本態性高血圧の2つがあります。ほとんどの高血圧は本態性高血圧に分類されますが、中には治療可能な二次性高血圧が隠れている場合もあります。
高血圧の原因は大きく分けて、特定の病気が原因で起こる二次性高血圧と、原因が特定できない本態性高血圧の2つがあります。ほとんどの高血圧は本態性高血圧に分類されますが、中には治療可能な二次性高血圧が隠れている場合もあります。
二次性高血圧
二次性高血圧は、全体の高血圧患者の約5〜10%を占めると言われています。
腎臓病や内分泌系の病気、血管の病気、薬剤などが原因で高血圧が引き起こされます。
例えば、腎臓の機能が低下すると、体内の塩分や水分をうまく排出できなくなり、血圧が上昇することがあります。
また、副腎から血圧を上げるホルモンが過剰に分泌される病気や、睡眠時無呼吸症候群なども二次性高血圧の原因となることがあります。
これらの原因を特定し、適切な治療を行うことで、高血圧が改善する可能性があります。
二次性高血圧の場合、一般的な高血圧治療薬では効果が出にくい場合や、若年層で高血圧が発症した場合などに疑われることがあります。
腎臓病や内分泌系の病気、血管の病気、薬剤などが原因で高血圧が引き起こされます。
例えば、腎臓の機能が低下すると、体内の塩分や水分をうまく排出できなくなり、血圧が上昇することがあります。
また、副腎から血圧を上げるホルモンが過剰に分泌される病気や、睡眠時無呼吸症候群なども二次性高血圧の原因となることがあります。
これらの原因を特定し、適切な治療を行うことで、高血圧が改善する可能性があります。
二次性高血圧の場合、一般的な高血圧治療薬では効果が出にくい場合や、若年層で高血圧が発症した場合などに疑われることがあります。
本態性高血圧
本態性高血圧は、高血圧患者の約90~95%を占める一般的な高血圧です。
明確な原因を特定することはできませんが、遺伝的な体質に加えて、日頃の生活習慣が大きく影響していると考えられています。
食塩の過剰摂取は、体内の水分量を増やし、血管にかかる圧力を高めます。
肥満は、血管を傷つけ、血圧を上昇させる物質を分泌しやすくします。
運動不足は、血圧を調整する自律神経の働きを悪化させ、血圧上昇を招きます。
また、喫煙は血管を収縮させ、動脈硬化を促進します。
過度な飲酒も血圧を上昇させる要因となります。
ストレスも血圧の一時的な上昇を引き起こすことがあり、慢性的なストレスは高血圧のリスクを高める可能性があります。
これらの生活習慣の改善は、本態性高血圧の治療において非常に重要となります。
明確な原因を特定することはできませんが、遺伝的な体質に加えて、日頃の生活習慣が大きく影響していると考えられています。
食塩の過剰摂取は、体内の水分量を増やし、血管にかかる圧力を高めます。
肥満は、血管を傷つけ、血圧を上昇させる物質を分泌しやすくします。
運動不足は、血圧を調整する自律神経の働きを悪化させ、血圧上昇を招きます。
また、喫煙は血管を収縮させ、動脈硬化を促進します。
過度な飲酒も血圧を上昇させる要因となります。
ストレスも血圧の一時的な上昇を引き起こすことがあり、慢性的なストレスは高血圧のリスクを高める可能性があります。
これらの生活習慣の改善は、本態性高血圧の治療において非常に重要となります。
高血圧のリスク・合併症
高血圧を放置すると、血管に常に高い圧力がかかるため、血管がダメージを受け、次第に硬く脆くなっていく「動脈硬化」を進行させます。
動脈硬化は、自覚症状がないまま進行し、やがて心臓や脳、腎臓など、全身の重要な臓器に深刻な合併症を引き起こす可能性があります。
高血圧が引き起こす合併症は多岐にわたり、命に関わるものも少なくありません。
それぞれの合併症について詳しく見ていきましょう。
動脈硬化は、自覚症状がないまま進行し、やがて心臓や脳、腎臓など、全身の重要な臓器に深刻な合併症を引き起こす可能性があります。
高血圧が引き起こす合併症は多岐にわたり、命に関わるものも少なくありません。
それぞれの合併症について詳しく見ていきましょう。
脳卒中
脳卒中は、高血圧によって脳の血管が詰まったり(脳梗塞)、破れたり(脳出血、くも膜下出血)して、脳に障害が起こる病気です。高血圧は脳の細い血管に大きな負担をかけ、動脈硬化を進行させるため、脳卒中の最大のリスク因子とされています。脳梗塞では、手足の麻痺、ろれつが回らない、意識障害などの症状が現れ、後遺症が残ることが少なくありません。また、ラクナ梗塞という自覚症状がほぼない脳梗塞もあり、これが多発することで認知症につながることもあります。脳出血やくも膜下出血は、突然の激しい頭痛や意識障害を伴い、命に関わることもあります。高血圧の適切な管理は、脳卒中の発症リスクを大幅に低下させることができます。
心臓病
高血圧は、心臓にも大きな負担をかけます。心臓は、高い血圧に逆らって血液を送り出さなければならないため、働きすぎによって心臓の筋肉が厚くなり(心肥大)、やがて心臓のポンプ機能が低下する「心不全」を引き起こすことがあります。また、ポンプ機能を補うために心拡大を引き起こし、心機能の低下を引き起こすことがあります。動脈硬化が心臓の冠動脈で進行すると、狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患の原因となります。これらは心臓に十分な血液が供給されなくなり、胸の痛みや息切れなどの症状が現れ、最悪の場合は命を落とすこともあります。
腎臓病
高血圧は、腎臓の非常に細い血管にも負担をかけ、腎臓の働きを徐々に悪くしていく「腎硬化症」を引き起こします。腎臓は、体内の老廃物をろ過し、尿として排出する重要な役割を担っていますが、腎機能が低下すると、体内に老廃物が蓄積し、むくみや倦怠感などの症状が現れます。さらに進行すると、人工透析が必要となる「慢性腎不全」に至ることもあります。高血圧の管理は、腎臓を守るためにも非常に重要です。
その他の合併症
高血圧は、これらの他にも様々な合併症を引き起こす可能性があります。例えば、目の網膜の血管に異常をきたす「高血圧性網膜症」は、視力低下や失明に至ることもあります。また、大動脈が瘤のように膨らむ「大動脈瘤」や、大動脈の壁が裂ける「大動脈解離」といった、命に関わる血管の病気のリスクも高まります。さらに、末梢動脈疾患(手足の血管が詰まる病気)や、認知症との関連も指摘されています。高血圧は全身の血管に影響を及ぼすため、早期から適切な治療を行い、合併症の予防に努めることが極めて重要です。
高血圧の治療
高血圧の治療は、血圧を下げることによって、将来起こりうる心臓病や脳卒中などの重大な合併症を予防することを目的としています。治療は、生活習慣の改善が基本となりますが、それだけでは血圧が十分に下がらない場合には、薬物療法を併用します。
高血圧の治療は、患者さんの状態や血圧の高さ、他の疾患の有無などを考慮して、医師が総合的に判断します。
高血圧の治療は、患者さんの状態や血圧の高さ、他の疾患の有無などを考慮して、医師が総合的に判断します。
生活習慣の改善
高血圧治療の最も重要な土台となるのが、生活習慣の改善です。薬物療法を行っている場合でも、生活習慣の改善は継続して行う必要があります。
減塩
高血圧の方にとって、最も効果的な生活習慣の改善の一つが減塩です。塩分を摂りすぎると、体内の水分量が増え、血管内の血液量が増加して血圧が上昇します。日本高血圧学会では、高血圧患者の1日の食塩摂取量を6g未満とすることを推奨しています。これは、日本人の平均的な食塩摂取量と比較するとかなり少ない量ですが、工夫次第で達成可能です。具体的には、加工食品やインスタント食品を控え、新鮮な食材を選ぶこと、醤油や味噌などの調味料を控えめに使うこと、出汁をしっかりとって風味を生かすこと、香辛料やハーブを活用することなどが挙げられます。外食時も、減塩メニューを選んだり、調味料の使用量を意識したりする工夫が必要です。
適正体重の維持
肥満は高血圧の大きなリスク因子です。特に内臓脂肪の蓄積は、血圧を上げるホルモンの分泌を促進したり、インスリン抵抗性を引き起こしたりして、高血圧を悪化させます。適正な体重を維持することで、血圧を下げる効果が期待できます。体重を減らすには、摂取カロリーと消費カロリーのバランスを見直すことが重要です。食事はバランス良く、腹八分目を心がけ、規則正しい食生活を送ることが大切です。急激なダイエットは避け、無理のない範囲で継続できる目標を設定しましょう。
運動習慣
適度な運動は、血圧を下げる効果があるだけでなく、体重管理、ストレス解消にも繋がり、高血圧の改善に非常に有効です。ウォーキング、ジョギング、水泳などの有酸素運動を、毎日30分以上、または週に合計150分以上行うことが推奨されています。運動の強度は、軽く汗ばむ程度が目安です。ただし、高血圧の程度によっては、運動の種類や強度に制限が必要な場合もあるため、運動を始める前に医師に相談するようにしましょう。運動は継続することが重要ですので、自分が楽しめる運動を見つけ、無理なく続ける工夫を凝らしてください。
節度ある飲酒
過度な飲酒は、血圧を上昇させることが知られています。男性は1日あたり純アルコール換算で20~30g以下(ビール中瓶1本、日本酒1合程度)、女性は1日あたり10~20g以下が目安とされています。また、週に1~2日は休肝日を設けることも重要です。全く飲まない方が血圧には良いですが、飲酒の習慣がある場合は、量を減らすことから始めてみましょう。
禁煙
喫煙は、血管を収縮させ、動脈硬化を促進し、血圧を上昇させるだけでなく、心筋梗塞や脳卒中のリスクを大幅に高めます。高血圧の方にとって、喫煙は特に危険な行為であり、禁煙は血圧を下げる上で非常に重要です。禁煙は、自分自身の努力だけでは難しい場合があります。まずは喫煙・禁煙に関してどのように考えていらっしゃるか、どのように動機付けをしていくかなどを話し合い、場合によってはニコチン代替療法などを利用することも検討しましょう。
薬物療法
生活習慣の改善だけでは目標血圧に達しない場合や、血圧が非常に高い場合には、薬物療法が開始されます。高血圧の薬は、様々な種類があり、患者さんの状態や合併症の有無などを考慮して、最適な薬が選択されます。
降圧薬の種類
降圧薬には、主に以下のような種類があります。
カルシウム拮抗薬
血管を広げて血圧を下げる薬です。動脈硬化の予防にも効果が期待されます。
ACE阻害薬/ARB (アンジオテンシン受容体拮抗薬)
血圧を上げるホルモンの働きを抑えて血圧を下げる薬です。心臓や腎臓を保護する作用も期待されます。
利尿薬
体内の余分な塩分や水分を尿として排出することで、血圧を下げる薬です。
β遮断薬
心臓の拍動数を抑え、心臓の負担を減らすことで血圧を下げる薬です。また、腎臓から分泌されるレニンを抑制することで血管収縮や余分な水分や塩分が貯まることを防ぎ、血圧を下げます。一部の薬剤では交感神経を抑えることで、血管収縮を抑制し、血圧を下げる作用があります。
これらの薬は、単独で使用されることもあれば、複数の種類を組み合わせて使用されることもあります。薬の効果には個人差があり、副作用が出る場合もありますので、自己判断で服用を中止したり、量を変更したりせず、必ず医師の指示に従ってください。
カルシウム拮抗薬
血管を広げて血圧を下げる薬です。動脈硬化の予防にも効果が期待されます。
ACE阻害薬/ARB (アンジオテンシン受容体拮抗薬)
血圧を上げるホルモンの働きを抑えて血圧を下げる薬です。心臓や腎臓を保護する作用も期待されます。
利尿薬
体内の余分な塩分や水分を尿として排出することで、血圧を下げる薬です。
β遮断薬
心臓の拍動数を抑え、心臓の負担を減らすことで血圧を下げる薬です。また、腎臓から分泌されるレニンを抑制することで血管収縮や余分な水分や塩分が貯まることを防ぎ、血圧を下げます。一部の薬剤では交感神経を抑えることで、血管収縮を抑制し、血圧を下げる作用があります。
これらの薬は、単独で使用されることもあれば、複数の種類を組み合わせて使用されることもあります。薬の効果には個人差があり、副作用が出る場合もありますので、自己判断で服用を中止したり、量を変更したりせず、必ず医師の指示に従ってください。